7月から、1年ほどの予定で休業いたします、とのお知らせを受け取ったのはひと月ほど前のこと。ああ、あのすばらしくおいしいお菓子たちともしばらくお別れなのね・・・。ならば食べ納めをして、しばしの別れにそなえましょう・・・と、デザートはベックルージュのお菓子を。
いつものようにあらかじめ用意されたメニュー表はなく、今まで人気のあったお菓子を作るのだとか。21日のお菓子は全部で7種類だった。
ルージュ・ベゼ いちごのババロアの中にハーブのゼリー
「赤いキス」。お酒もしっかり効いている。いちごの華やかな香りを、中のハーブの葉も入ったゼリーがきりっと引き締めているので、いちごのお菓子にありがちな子ども子どもしたスイートなお菓子になっていない。
トランシュ・シャンプノワーズ シャンパンのムースにフルーツとチョコレート
濃く香りが残るシャンパンのムースにフランボワーズと洋梨。卵黄の色がきれいなビスキュイの風味もしっかりと感じられて、味の強いチョコレートと組み合わせてあるのに、負けていない。
サランボ アメがけした、カスタードクリームのシュークリーム キルシュ入り。
楕円形に焼いたシュー生地にキルシュの入ったクリームを詰めて飴がけし、本来的にはピスタチオで飾ったお菓子を、サランボ(Salammbô)と言う。
Salammbôというのは、1862年に発表された、フローベールのカルタゴを舞台にした小説で、オペラにもなって、当時大変な人気だったそうだ。このお菓子が作られたのも19世紀。
カルタゴというのは現在のチュニジアにある。で、今でもピスタチオの特産地であるシチリアとは距離的にも近く、チュニジアにもピスタチオを使ったお菓子がある。このお菓子がピスタチオで飾られていたことを考えれば、このお菓子の名前の由来というか成り立ちの経緯というかは、日本で言うなら「助六」みたいなものか(笑)?芝居好きのフランスのお菓子屋の店主が、ちょっと当時はやってた芝居とひっかけてみました。どうだ俺のエスプリは・・・?みたいな。
このお菓子はしっかり常温に戻す方がいい。とは言っても日本の夏は暑すぎる。しっかり焼かれて塩も少し入ったシュー、かりっとした飴、濃厚な風味のぽってりしたクリーム。19世紀から生き残っているのも当然と思うおいしさだ。
エヴァズィオン パイナップル、ライム、バナナ、ココナッツ、しょうがをミックスしたムース。
évasion、意味は「逃亡」。山口さん、ほんまにええ名前つけはったなあ・・・と思いました。イメージは、常夏の楽園への逃亡、なんでしょうねぇ・・・。ひと口食べれば、意味するところがすぐわかる。ふんわり香るバナナ、きりっとしたしょうがにさわやかなライムの香り。中にはパイナップルがごろごろ。わたしも夏の国に逃亡したい・・・。
ローザス・フランボワーズ アニスの香りにフランボワーズが入ったお菓子。
上の飾りはイタリアンメレンゲ。アニスの風味のちょっとざらっとした感じのムース。アニスとフランボワーズって思いつきもしないような組み合わせだけれど、おいしいのだなあ。
ビッシュ・シトロン 2種のレモンのムースとピスタチオのダックワーズ生地。
表面に絞ってあるのは、ほとんどメレンゲかと思うような軽い軽いバタームース。ダックワーズの緑色が目にも鮮やかで、ピスタチオの強い風味。レモンの香りもきりっとしていて少し苦味を感じるよう。たいへん個性的なお菓子。
マンゴーとチーズ
最初6種類作る予定だったところ、急遽増やしたそう。ビスキュイの表面の、ちょっとさくっとしたところが好きでね・・。中のマンゴーの甘い香り。クリームもまろやかで、素直な感じのお菓子。
ああ、これでしばらくは食べられないねぇ・・・。ベックルージュのお菓子は香りがとても重視されていると思う。異なった香りの素材を組み合わせてお菓子を組み立てておられるのは、調香師の仕事のようだ。ムースは限界まで柔らかく、とてもデリケート。いつ食べても、本当においしいお菓子だと思う。
再会の日を今から待ちわびております・・・。
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