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vendredi 11 avril 2008

河鍋暁斎

025  京都国立博物館で8日から始まった、特別展覧会 没後120年記念『絵画の冒険者 暁斎 Kyosai―近代へ架ける橋―』を、さっそく初日に見に行ってきた。京都国際マンガミュージアムでも暁斎展をやっているので、今かなり注目されているのかもしれない。京博でも、若冲→蕭白→暁斎の流れで展覧会を開催しているようだ。

 確かに。浮世絵の展覧会に行くと必ず3、4点は出ていた暁斎の作品。どれも独特の筆致に不思議と目がひきつけられた。

 暁斎はおもしろい。彼の手にかかると、髑髏は舞い、鬼は逃げ惑い、雷神は太鼓を海に落としてしまって、風神に非難の視線を投げかけられるかと思えば、キリスト、釈迦、老子、孔子は皆打ち揃って合奏だ。

 中でもおもしろかったのが、「閻魔大王浄波璃鏡図」。浄波璃鏡(じょうはりのかがみ)というのは、閻魔庁での裁判で、死人を映せばその生前の罪が映し出されるという鏡。

 この絵の中で、鏡の前に座るのは一人の涼しげな美人。しかし彼女の罪が映し出されているはずの鏡面には、ただただその美人の姿がそのまま映っているばかり。それを閻魔大王と鬼が覗き込んで、非常に困惑した表情を浮かべている。絵の解説文(最近の展覧会は、これが断然おもしろくなっているのだ)によると、閻魔大王は「ショックを受けている」(笑)。暁斎は穢れなき女性を表しているのか、女の強かさを表しているのか・・・。

 暁斎は絵がうまい。狩野派でしっかりと絵を学んだらしい。強弱のある流れるような衣文の線や、細い毛の表現、対象物をとらえる難しい角度、細密かつ正確な画中画・・・。素人にもすごいテクニックだなあと思わせる。一枚の絵に、狩野派、四条派、浮世絵などの技巧がすべて盛り込まれている、という絵があったが、残念ながら知識不足で、わたしにはどれがどれともわからなかったのが残念。

 暁斎は怖い。あの幽霊画の怖さと言ったら・・・。絵がうまいと幽霊画はものすごく怖くなる。あれを行灯の光で見たら、怖がりの人ならもうだめだ。昔、曼殊院にあった、祟ると評判の幽霊画よりも怖いくらいだ。ここで大画面でお見せできないのは残念!

 暁斎は大迫力。「巨大画面への挑戦」と題された、大きな作品ばかりを集めた部屋があった。画面の大きさをものともせず、力強い筆致で描かれた作品にはただただ圧倒される。すごいのはずっと近寄って、細部をじっと見ても、少しの乱れもないことだ。特に「龍頭観音図」などはそう。

 「少女たつへの鎮魂歌(レクイエム)と題された部屋があった。たつ(田鶴)というのは暁斎のパトロンであった勝田家の一人娘で、14歳の若さで亡くなったらしい。その娘の一周忌に合わせて、勝田家から依頼を受けて制作されたのが、「地獄極楽めぐり図」。若くして亡くなったたつが、菩薩に連れられて、冥界を巡り、極楽に至る様子を連作ストーリーのように仕上げた作品。その中でたつは、賽の河原で子どもたちにおもちゃを配ったり、宿場で、観音様風の衣裳を着てお仕度をさせてもらったりと何やらとても楽しげ。

 娘が亡くなってからもあの世で楽しそうにしている・・・。そんな絵を見て、たつの両親はどんなに慰められただろう。またこんな絵を描いた暁斎、そして絵を依頼した両親の、娘への深い愛情を感じて、ちょっと涙ぐんでしまった。不思議なことに、これを書いている今も泣いている。愛する者が、遠く離れたところでも辛い思いをすることなく、幸せでいると思えることは、大きな安心と癒しなのだ。

 もう一作品。「ひな祭り図」。こちらも、たつが亡くなったあとも、天女や菩薩といっしょに楽しく雛人形を飾りつけて遊んでいる、という絵。同じ理由で、これを書いている今も、思い出して涙が止まらなくなる作品。若くして亡くなった女の子、たつちゃんとは何のつながりもないはずのにこれは大層不思議なことだ。 

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Commentaires

  私も暁斎ってすごいと思います。

  幸い、隣県に御子孫の運営される美術館があり、見に行くことができます。
 暁斎って女性に対してとても畏敬の念をもっていたのじゃないでしょうか?作品を描く時の様子を創造すると怖くなるようなエネルギーです。

 私も見に行きたいなぁ。
 

Rédigé par: 東女 | samedi 12 avril 2008 14:03

曼殊院の幽霊画より恐いんですか・・・絶句
それは・・・それは・・・(汗)
曼殊院と云えば、山火事が延焼しなくて良かったです。(合ってますか?)
最近 携帯から普通に はたこ さんのブログが読める様になっているのに気付きまして、PCの前でなくても記事拝見しております。

Rédigé par: M.K | samedi 12 avril 2008 16:12

東女さん,
蕨市の暁斎美術館ですね。
暁斎はあの大画面の作品を見るとほんとにすごいパワーを感じますねぇ・・。

会期は1ヵ月。マンガミュージアムと合わせて、京都遠征、いかがでしょうか?

Rédigé par: はたこ | dimanche 13 avril 2008 00:04

M.Kさん,
上の幽霊画、曼殊院と比べていかがでしょう?
山火事は知らなかったのですが、くだんの幽霊画は、もう曼殊院にはありませんよね?

Rédigé par: はたこ | dimanche 13 avril 2008 00:06

こちらの文章を読んで10年前に交通事故でなくなった親友のことを思い出しました。
あの世で楽しく過ごせていると思えば、少しは慰められますね。彼女に逢えるのは果たしていつなのかわからないけれど、きっと逢えると信じています。
なんだか暗い文面になって申し訳ありません。

Rédigé par: まりまり | dimanche 13 avril 2008 13:32

まりまりさん,
折にふれて、お友達の笑顔を思い出せば、その分だけ彼女も一層幸せになるのではないでしょうか。
遠く離れても、心のつながりがなくなるわけではありませんから・・・。

Rédigé par: はたこ | dimanche 13 avril 2008 21:20

携帯から〜観れるのに気付きましたって云ってる割には 龜レスですが((汗)(笑))。
観たのは確か 4〜5年前で〜しかも 特別個人拝観だったのかも・・・
タクシー運転手さんにお任せで廻ってもらってて
降りる時に年齢を言いはって 7* 歳ですとかって〜
そんな感じしない素晴らしい運転技術でした
京都の呉服屋の若旦那だったらしくて・・・ 遊び呆けて店潰しましたって・・・
カーマニアだったらしくて運転の仕事したらって〜熱海のタクシー会社紹介してもらったらしいです。
なんかテレビドラマの梅沢**さん前川*さんの熱海のタクシードライバーシリーズのモデルになった人みたいでしす。
同僚がどんどん少なくなってお馴染みのお客さんも少なくなって寂しいっつておっしゃってました・・・
まだ現役でやってはるかなぁ〜
件の作品は今は 曼殊院にはないんですね。

Rédigé par: M.K | lundi 14 avril 2008 21:59

M.Kさん,
タクシーの運転手さんも長くなるとけっこうな人脈を持っていらっしゃることがあるようですね。
幽霊画は何年か前に、元の持ち主のところに帰ったと聞きました。わたしは一回だけ見ましたよ。一回で十分ですが(笑)。有名でしたよね。

Rédigé par: はたこ | lundi 14 avril 2008 23:11

はたこさん、お久しぶりです。

話題の『暁斎展』、先週末にやっと見にいけました。
130余店の作品に圧倒されました。
本当に絵がうまい人だったのですね。

「地獄極楽めぐり図」、とても良かったです。
暁斎のあふれる想像力と技術と愛情が出ているようで…。
後期は絵が変わるようなので、また行きたいくらいです。

Rédigé par: nao-mi | mardi 29 avril 2008 20:10

nao-miさん,
お久しぶりです。
暁斎はまとめて見るとより一層すごさがわかりましたね。
わたしも展示替え後にまた行きたいです。

Rédigé par: はたこ | mardi 29 avril 2008 22:06

Hi! I know this is somewhat off topic but I was wondering
if you knew where I could find a captcha plugin for my comment form?
I'm using the same blog platform as yours and I'm having difficulty finding one?
Thanks a lot! 姶良タウン骨盤整骨院 はり灸院

Rédigé par: 姶良交通事故治療 | jeudi 07 avril 2022 10:41

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