兵どもが夢の跡
とうとうやって来た、今の職場での勤務最終日。少し早めに出勤して、課内会費の清算と収支報告だとか督促だとか、いくつかの仕事をすっきりさせる。さらにできる限りのカウンター内の整理。業務を元締めに引き継ぐ準備。資料の整理は昨日までできっちり終わっているので、今日も書類やファイルや消耗品の整理が中心。キャビネット、デスク、個人用のPCの中身や自分のロッカーをすっかり空にしたり。バタバタが夜の閉館後まで続く。
もちろん通常どおり開館しているので、カウンター業務は通常どおり。「最後の日」というのを、人は案外、ふだんと変わらず過ごすものなのかもしれない。明日死ぬことになっています、という前の日も、いつも通り暮らすのかも。
「お姉さんもいっしょに」と、小さい子といっしょにカウンターで写真に納まったり、わたしなんかよりずっと長くこの図書館に通っておられる常連さんから、しみじみとした言葉をかけられたり、というのだけはいつもと違うところ。
この職場で働いて丸6年。過ぎてしまえばあっという間で、夢のまた夢、という感じ。いろいろなことがあった。来て2年目くらいまでは、どうしてもこの職場が好きになれなかった。泣いたこともあった。そんな自分がここで6年を過ごし、クローズに立ち会うことになるとは思いもよらなかったことだ。
写真の読書テラスは気持ちのいい場所だった。もちろん飲食は禁止だけれど、何日間か閉館しての作業のときなんかには、ここでお昼ごはんを食べたりもした。「カフェを併設したらいいのにねぇ・・」などと言いつつ。
閉館間際になって、「やはり、最後に見ておきたくて」、とNさんご来館。そう、もうここは、物理的になくなってしまうわけだから、完全に、心の中にしかない場所になる。
毎日当たり前に通った場所に明日からもう行くこともない、というのは不思議な感覚だ。「卒業」に似ている。長い一日が終わって、M嬢とあいさつしたときが一番寂しかったかも。彼女は一人だけ異動先が違う。気が合って、単なる仕事仲間の域を越えて、友達になってしまうと別れが辛い。夜、帰る間際にくるりと館内を回って、いろんな場所で、「6年間ありがとうございました」と心の中でお礼を言った。
帰りに、TさんとH嬢と、すぐ近所にできて、気になっていた「黒毛和牛」と書いてある店に、最後のチャンスとばかりに行ってみる。M嬢が来られなかったのは残念だけど、ほんとの内々の打ち上げだ。ビールを飲みながら、タン、カルビ、ほほ肉、赤セン、ホソ、レバーなんかを焼いて食べる。ナムル、白菜キムチ、最後には牛すじピビンバなど。この店はヒットだ。肉の質もよくてとてもおいしかった。「もっと早く来てみればよかったねぇ」などと言いつつ食べる(笑)。
テラスの桜も既に満開近く。藤棚もあったし、梅も、椿も、シナモンの木も、いろんな木があった。あの木はどうなってしまうんだろう。もったないねぇ。
明日はお休みで、二日から行くところは、言ってみれば、「この仕事をしているわたし」の原点となった場所。でも長い年月が経って、自分をかわいがってくれた先輩方も、仲の良い友達も、退職や異動でもうほとんどそこにはいなくなってしまった。
誰をかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の友ならなくに
気持ちは限りなくそれに近い。
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