たいてい図書館では、T社を通じて本を買う。先日いつものようにT社に、C社出版の、絵巻の全集を発注したところ、どういうわけか東京のC社から直接に電話がかかって来た。通常、版元から直接電話がかかるということはないのでいぶかしく思ったが、とりあえず話を聞いてみた。
「T社からご注文いただいた絵巻の全集は、品切れで、全巻揃わないけれど、その親本となった全集なら1セットだけ倉庫にございますが、いかがいたしましょうか?」という話だった。その親本というのは、26巻からなる、豪華な全集でかなり値も張りそうなものだったので考えていなかったのだが、一応値段を聞いてみた。
47万円。ひ~。やめ。やめだ。と思った瞬間、相手から「直販はできますか?」と聞かれる。できないこともありませんが・・。でも装備やらの都合もあるので、T社を通してもらった方がありがたいのですが・・・。と言うと、「実はね・・」と相手は種明しを始める。
「現在出回っているこの全集の流通価格は47万円。しかし今弊社の倉庫に1セットだけあるのは初版本で、価格が28万円なんです」
・・・ずいぶん値上がりしたんですねぇ・・。
「でもT社を通すと、こちらが28万円で納品しても、規定か何かがあるようで、現在の流通価格が適用されるらしく、47万になってしまうようなのです・・・」
ええ!?その差額はどうなるのん??・・・とは思っただけで次の言葉を待つ。
「直販ができると、28万でお売りできるのですが・・・」
なぬ!?思わず色めき立ち、経理担当のサブボスと一瞬相談の上、即決。買い!だ。
・・・「直販でいただきます」
「ありがとうございます。ではそこからさらに2割引させていただきます」
・・・きゃっほう~~!
古い在庫をはけさせたい出版社と、一円でも安く買いたい図書館との利害がめでたく一致。かくして豪華な絵巻全集が納品されてきたのだが、請求額は24万円ほど。市価の半額で豪華本が手に入ってほくほくであるのだが、もし、T社を通じて買っていたら、その差額はT社の利益になっていたのだろうか。もしそうなら、なんとなくあこぎだな。
納品された全集の箱に入っていたのがこの何冊かの白い本。見かけは本だけれども、中はすべて白紙。でもしっかりした造りだ。どうやら製本のサンプルのようだ。ご丁寧に添えられた、「メモにお使いください」、との担当者の添え書きが笑えた。
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夕ご飯に、村上の塩引き鮭を食べる。塩鮭はふだんそんなに好んで食べるものでもないが、年に一回だけある、伊勢丹の「新潟・長野物産展」に来るこの塩引きだけは別だ。少々高いけれど、必ず買う。
一般的な塩鮭と違って、これは強い塩をした上で寒風で乾かしてあるから、塩も強く、旨みが凝縮している。焼けば腹のところから塩が吹くほど。でもこの塩辛い、脂の乗った腹身がとてもおいしいのだ。かりっと焼いた皮もうまい。白御飯をついたくさん食べてしまう危険な鮭だ。
父の故郷から山を越すと、そこは新潟。父の子どもの頃は、その山を越えて村上から塩引きの行商が来ていたらしい。塩引きは父の思い出の味なのだ。
行ったことはないけれど、子どもの頃から何度も聞いた「村上」という地名。冬。灰色の荒れる海。雪の中、山を越えてたくさんの塩引きを運ぶ行商の人(イメージ上ではなぜか徒歩)・・・。そんな風景が、「村上」という土地の名を聞いただけで目の前に広がるのだけれど、ほんとはどんなところなのだろう。いつの日にか行ってみたいものだ。
その対極にあるのが「加太」で、ここも行ったこともないのに、その名を聞くだけで、明るい太陽、青い海、穏やかな海岸線・・・などが目に浮かぶ。なぜかいろんな人の口から、「加太」という土地の名前を聞いたり、思いがけず本で読んだりすることが多いので、どんなところなのかとても気になる。ほんとはどんなところなのだろう。村上よりはずっと近いので、一度見に行ってみたいものだ。
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